カメラ初心者におくる知っておくべき名カメラマン、見ておくべき写真集

天下の“アラーキー”・荒木経惟│カメラ初心者におくる知っておくべき名カメラマン、見ておくべき写真集

荒木経惟(あらき のぶよし)さんは、「アラーキー」の愛称で知られ、国際的に活躍する写真家。丸い縁の黒めがねが、トレードマークです。1940年5月25日、東京生まれ。 荒木さんは1963年に千葉大学工学部写真印刷工学科卒業し、株式会社電通に宣伝用カメラマンとして入社。1964年には、昭和30年代の活々とした子ども達の笑顔を活写した写真集『さっちん』で、第1回太陽賞受賞しました。太陽賞とは、雑誌『太陽』の発刊を記念して創設された賞で、受賞者の多くが写真界の最前線で活躍しています。そして1972年より、フリーランスとして活動し始めました。

■妻・陽子さんを被写体とし、撮り続けた

1971年には、電通で出会った青木陽子さんと結婚しました。これまで荒木さんは、陽子さんをテーマにした作品を数多く残しています。 新婚旅行を撮影した『センチメンタルな旅』を1971年に限定1000部で自費出版。1982年に発売した『10年目の「センチメンタルな旅」』では、夫婦で旅したフランス、スペイン、アルゼンチンのストリートフォトを荒木さんが撮影し、その思い出をエッセイストであった陽子さんが綴っています。

1984年に発売した『ノスタルジアの夜』は、結婚記念日に出版された1000部限定のタブロイド版の写真集です。さらに1985年に『愛情生活』、1987年に『酔い痴れて』、1989年に『愛情旅行』と、陽子さんとの生活を撮影した写真集を出版してきました。 また陽子さんが子宮肉腫のため他界するまでの数ヶ月を記録した『センチメンタルな旅・冬の旅』は、世界的にも大きな反響を呼びました。

■国際的な評価も高い写真家

世界的に有名な写真家である荒木さんは、欧米では「グラン・マエストロ」(大巨匠)と称され高い評価を受けています。2008年には、オーストリア政府より、世界的に活躍する芸術家に贈られる、オーストリア科学芸術勲章を受賞しました。 国内でも受賞経験が多くあり、1999年に織部賞、2011年に安吾賞、2013年に毎日芸術賞特別賞などを受賞しています。

また海外での展示会も多く、1997年にウィーン・セセッション会館で個展『Tokyo Comedy』の開催や、2005年にロンドンのバービカン・アート・ギャラリーで『ARAKI:Self,Life,Death』を開催しました。 日本での主な展覧会に、1999年に東京都現代美術館で開催された『センチメンタルな写真、人生。』や、2006年に江戸東京博物館で開催された『東京人生 東京人生、写真人生、Aノ人生』などがあります。

■『日本人ノ顔』プロジェクト

人物写真を得意とし、人情味溢れるスナップ写真が有名な荒木さん。2002年からは、全国47都道府県に暮す人たちの肖像写真を撮影する『日本人ノ顔』プロジェクトを続けています。撮影した肖像写真は、写真展での展示だけでなく、写真集にも収録しています。

これまで、2002年に『大阪ノ顔』、2003年に『福岡ノ顔』、2004年に『(日本人ノ顔)』石川ノ顔』、2006年に『青森ノ顔』、2008年に『佐賀ノ顔』などの写真集を発売しています。 荒木さんには数々の名言があり、「見せないんだったら、撮らないのと同じ」、「写真には情が写る。被写体に対する思いやりと慈しみ、つまり情を写してあげる気持ちが必要」といった言葉があります。

■病気で失明した後、『左眼ノ恋』シリーズを発表

これまで450冊以上の本を制作している荒木さん。代表作に1990年発売した『愛しのチロ』、2009年発売の『荒木経惟 トーキョー・アルキ』、『東京ゼンリツセンガン』などがあります。『愛しのチロ』は、荒木さんと妻の陽子さんがこよなく愛した猫のチロの生きる歓びにあふれた写真集です。 また2013年末に網膜中心動脈閉塞症により、右目を失明した荒木さん。2014年には、撮影したポジフィルムの右部分を黒マジックで塗りつぶした新シリーズ『左眼ノ恋』を発表し、300部限定の作品集も発売しました。